Rougeは過去のリヴァイヴァルではない音楽という美しさの物語。そして翼を欲しがった少女と少女の羽根になりたがった少年の物語。そこにロックの美しさーーエレガンスとソロウがある。今もの生きているのなら捧げよう。何もかも。音楽と言う名の牧神に。叶うなら。何もかも捧げる。それは2015年12月8日。ジョン・レノンの死んだ日に。日本武道館に奇跡的にライズの頂点を極めたヴァンドのそのシーンから始まる。
「リリィを2月14日聖バレンタインデーに」
それはHeartsの新しい旅の始まり。
One Normal Dayは今日で終わり。
汐野は去年三代堅に言っている。
One Normal Dayでの終わりが良かった。
と。
One Normal Day
普通の日々
だからこそ尊い日々。
そしてその日々はかけがけなく過ぎ去り
2月14日から旅が始まる。
翔と凛湖の──
Heartsの──
「今は2020年ですね。
ある人が繰り返し言っていました。
2020年は呪われた年になると。
それは僕達の友人なのですが。
その時僕たちは何を信じたら良いのでしょうか。
それは美しい過去の追憶。
僕はボウイのキャリアの本質的な終わりはこの歌だと思っています。
それも僕の友人からの影響なのですが。
その人は言いました。
僕がボウイで一番好きな曲だと。
2003年。美しいものが次々と死んでいく年。
その年に過去の70年代の追憶を歌ったボウイのこの曲がふさわしいと思いました」
Showは言う。
「In memory of the Astoria Hall」
「アストリアホールの追悼を込めて」
続けて言う。最後の曲のその前の言葉を。
「Dead or alive」
「生きていても、死んでいても構わない 」
そして最後の曲として歌われる──
「Sink Into The Sin ──罪に沈み込むみたいに」
翔が神谷に言った言葉と符合する。心臓は高鳴る。どきどきする。翔は凜湖と共に zatracenieを聴いてみた。
そこにあるものは。
Beyond ──
日を少し置き汐野の言う通り届いた「哀しみのベラドンナ」を凜湖と共に観てみた。
二人寄り添うように。
ジュール・ミシュレの「魔女」を原作とした虫プロダクションの作品。そこでは美しい女ジャンヌが夫の婚礼の時に領主に処女を奪われ、失意ののちに彷徨う時悪魔との邂逅を経て魔女と化した後悲劇的な火刑という死を迎える。
「哀しい物語ね」
「ああ、だからこそ美しいと思うな俺は」
Rouge vol.48
そしてAAAMYYYのライヴのシーンが克明に甦ってくる。
確信。
予言。
七月も終わる頃。その頃汐野は新居に引っ越していた。
そしてロンドンで。
様々に重なったイマージュがソングライティングとしてかたちになる。
疫病、 この呪われた2020年にボウイならどのようなアルヴァムを作るのかと翔は思った。
癌に侵されながら、本当のキャリアを Bring Me The Disco King で終わりを告げさせ、そしてNEXT DAY、 Nothing Has Changed 、★を僕達のギフトとして頭蓋は地球に、そして肉体は★へと帰り、最後のペルソナ Button Manを演じたボウイ。
そのBlackstarのヴィデオクリップで蝋燭の炎をIS(イスラム国だよ)だよと謎めいた言葉を残したボウイ。
リハーサルを重ねていくHearts。過去の曲は行わずアルヴァム「Prophet 」──預言者の曲順のままに行うというものだ。確かボウイがアルヴァムRealityのリリースライヴで行なった手法だ。
9月22日が来る。
BUCK-TICKのABRACADARAのリリース配信ライヴから一日明けての22日WALL & WALLにぽつりぽつりと客達が来る。
検温を済ませ、手足の消毒を行い数少ないオーディエンスはWALL & WALLのフロアに入っていく。
SEが流れる中、翔、凛湖、透、浅葱とメンヴァーが出てくる。
歓声は上げることはできない。
SEが止まり、曲は唐突に始まった。
そしてささやかなディナーは続き、終わりを迎えロンドン最後の夜になる。
共のベットで天井を見ながら凛湖は言う。
「レコーディングも無事済んだし、明日は日本へ帰るのね」
「ああ、日本へ帰るんだな──」
「日本はどんな状況になっているんだろう。私達がライヴをやる事とか出来るのかな」
「完全な形では難しいかもしれないな──少しづつオーディエンスを入れ配信をして、いつか本当の形に戻れたらって思う。だけど俺はお前がこの2020年に起きた疫病にかからなくて良かったよ」
「そうね。私は心臓がまだ治っていなかったから危険だったわね。神泉に帰ったらどんな生活が待っているんだろう」
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