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Rougeは過去のリヴァイヴァルではない音楽という美しさの物語。そして翼を欲しがった少女と少女の羽根になりたがった少年の物語。そこにロックの美しさーーエレガンスとソロウがある。今もの生きているのなら捧げよう。何もかも。音楽と言う名の牧神に。叶うなら。何もかも捧げる。それは2015年12月8日。ジョン・レノンの死んだ日に。日本武道館に奇跡的にライズの頂点を極めたヴァンドのそのシーンから始まる。

Rouge vol.57

汐野の言葉は続く。
「ボウイは時代を映し出す鏡と言われたぐらいに時間と関係する曲がソングライティングされている。Timeもそうだし、Changesもそうだし、ZIGGYの最終曲Rock 'N Roll Suicideも冒頭にシガレットが時間を燃やすとソングライティングしている。ボウイは時間は変える事が出来ないものでありながら「それ」を自らの意識で変えていく。時間の普遍性を変えていくように。そのボウイがキャリアの最終曲——僕はそう思っている。Bring Me The Disco Kingは70年代の追憶で終わる。「生きていても死んでいても構わない。ディスコキングを連れて来てくれ。生きていても死んでいても構わない。ディスコキングを連れて来てきてくれ」と言うように」

Rouge vol.58

そして——Prophet——からのAlabia、villainでオーディエンスは盛り上がる——
「If everything is nothing embrace nothingness」
「全てが無なら。無を抱けばいい」
とWith out gentle Kissを演奏するHearts。そして続くインストィメタルのWarter slideでオーディエンスの感情は爆発した。
インストゥメタルのWarter slide。だがロックオリエンテッドに満ちた曲が始まった時オーディエンスは棒立ちになり歓声を上げる。そして踊る。Warter slideのブラスト音。それがレディングの地に響き渡る。会場がダンスフロアと再び化す。
ShowはWarter slideを演奏しながら叫ぶ。
「If everything is nothing embrace nothingness」
「If everything is nothing embrace nothingness」
と。
全てが無なら無を抱けばいい——
無を抱く事が出来る誰かは存在するのか——
もし、いればどんな歌を歌うのか——

Rouge vol.59

「後1週間。イギリスで巨大な夢を実現させたHeartsが日本ツアーに入る。この狂乱の時代にHeartsは去年発表したアルヴァム――Prophet――を引っさげ日本を廻るそれはヘンリー・カウの腐食でもなく、時を欺く事でもない。彼等だけのロックの美しさ。ドラムに晃を加えた事により、ロックオリエンテッドに、ニューウェーブの再来の音でもあり、紛れもないロックの美しさそのもの。彼等のロックとはヴィクティムとエレガンスに倣うもの。それはロックがしめやかな葬送の時を迎えてから2つのディケイドが過ぎようとしている。しかしHeartsはそれを拒絶する。この全てが変わってしまった時代にHeartsの音楽は何を伝えるのか。過去ロックの美しさとはヴァイオレンスとエレガンスに倣うものだった。そしてこの時代のロックの美しさはヴィクティムとエレガンスに帰属する。聴くがいい、観るがいい。Heartsのロックのプリズムを。その光に照らされている時がこの全てが変わった世界であなた達が燃える時だ」

Rouge vol.60

私は既に冥府へ旅立ってしまったわ
優しいキスなんていらない

 

前半のクライマックスだ。この曲の熾烈な美しさにオーディエンスは喝采で答える。歓声の代わりの喝采。今この時代に交換される友愛。切ないけれどそれが精一杯だった。だけどその白熱さは渋谷クラブクアトロに睨しすべかざる何かを宿らし初めていた。

 

そしてライヴの最中、Showはこのフレーズを叫んでいた。

 

「And Whan, I' sad I slide——世界が終わるなら、滑れ」と——

 

T.rexがキャリアの絶頂の時の曲THE SLIDERその歌詞からの引用だ。訳すると悲しいから滑るだが、Showはその悲しみを世界が終わると変え、その哀しみを突き抜け露という意味でこのフレーズを叫んでいた。

Rouge vol.61

その言葉には答えず夜のホテルの中、翔は凛湖をダンスに誘う。

抱き合う恋人達。

暗闇の部屋に翔の黒は更に漆黒に、鮮やかな凛湖のワンピースは蛍火のような色彩を放った。

二人踊りながらくちづけを交わす。いつもしている行為、だが、この夜は何かが違う行為。

人の形をした漆黒と可憐な色彩が揺れる。

揺れる。

揺れる。

そして翔は言う。

貸される翔の手。やさしく差し出されたその手を掴みながら凛湖はじっとその言葉を聞く。

「名古屋で観た月は綺麗で太陽は眩しかった。そしてお前は全てを照らす花だよ。僕は凛湖——君がいない時も君を感じ、君に話しかけてた」

「離れた事なんてないのに」
しなだれかかるような凛湖の声に答えずに——

「いつも——」

「君を愛してる」

Rouge vol.62

「先生、凛湖の状態は?」
翔は凛湖と共に診察室で先生に聞く。心臓の名医だと聞く。

「・・詳細は話しましたね。彼女の場合は手術が出来なく抗がん剤治療を行っています。奇跡的に抗がん剤が効いているのか吐血した時と状態は変わっていない。経過の様子を見てみましょう。ですがこのまま行くと彼女の命は・・」
「先生・・」
「翔・・いいのよ。私は今も生きてる。車椅子を使っているけど歩く事も出来るわ。あれから血も吐いてないし、きっと前みたいに普通に生活して音楽を作る事が出来る。それから翔・・私の為にもソロライヴやって。病室で観ているから」


 

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