top of page

Rougeは過去のリヴァイヴァルではない音楽という美しさの物語。そして翼を欲しがった少女と少女の羽根になりたがった少年の物語。そこにロックの美しさーーエレガンスとソロウがある。今もの生きているのなら捧げよう。何もかも。音楽と言う名の牧神に。叶うなら。何もかも捧げる。それは2015年12月8日。ジョン・レノンの死んだ日に。日本武道館に奇跡的にライズの頂点を極めたヴァンドのそのシーンから始まる。

Rouge vol.74

Where I look
That is the world

Where I look
That is the world

繰り返される凛湖の歌声。それは火刑に処されたジャンヌが──その光景を観る”女”達が全てジャンヌの貌になったのを幻視させた。

Rouge vol.75

翔や透の気遣う様子。そして途中のLINEで聞いた神谷、汐野の声に落ち着きを取り戻したかのように見えた。ハートの奥は垣間見えないが。

凛湖の「大丈夫よ・・」の声が救いだった。弱々しかったが。

そうしているうちに出番が来た。プライマル・スクリームの前だ。

Heartsは初のサマーソニックのステージを不穏さを孕んだまま迎える事になった。
まるでマーク・ボランの貌つきに早くも刻まれていた不吉で険しい死相のように。

ああ、桜の舞い散る中を1枚のタロットカードが風に流れていく。
それは獣の悪魔のカードだった。
タロットナンヴァーNo.15(フィフティーン)。

Rouge vol.76

「翔、ごめんね」
凛湖が言葉をその美しい唇から響かせる。その言葉には憂鬱のフィールが籠っていた。
「大丈夫だよ。やっぱり夏がバケーションも挟んだけど体力的にキツかったんだよ。1週間しっかり休んでそしてリハに備えれば。最終調整だけだしな」
「そうね。アレンジとかも決まっていたものね。気持ちを切り替えてこの1週間しっかり休むわ」
「ああ、そんなに自分を追い詰める事ないんだよ。やれる事をゆっくりな。ナスチャと遊んであげな」
「そうね、最近ナスチャと余り遊んでないな。遊ぼ」
「ああ、それがいいよ、凛湖ゆっくりとな」
翔の言葉に凛湖が急に静かになって呟く。
「ゆっくりしている時間は無いもの」
「・・・・」
その凛湖の言葉を翔は沈黙のまま聴いた。
「翔も知ってるでしょ。私の心臓の事」
アルファロメオスパイダーは残暑の残る夜の道路を走っている。
「今は抗がん剤が効いているけどいつ効果が切れるか分からない。正直もう時間は残されていないのよ」

仏陀と神々は信託によって最高の真理を語る
愚か者は偽りを語り、それら全てに背を向ける
親愛なる読者よ、どうかこのことと共に道を歩み通してほしい
よりよいものを望む時間はもう残されていないのだ

Rouge vol.77

翔はLast Dance In The Moonlightを通しで弾き語りデータを聴く。

それは自分の声ではなく、ラジオの声・・スターマンの歌声のようだった。

There's a starman waiting in the sky
スターマンだ 彼が空で待っている
He's told us not to blow it
彼は僕らの心を吹き飛ばしはしないと言ったんだ
'Cause he knows it's all worthwhile
心がとっても大切なものだと知っていたらさ
He told me
彼は言った
Let the children lose it
子供たちの心を熱狂させよう
Let the children use it
子供たちに心を使わせよう
Let all the children boogie
子供たちみんなに ブギーさせよう

Rouge vol.78

羽田ーー飛行機が絶えず飛びZepp Hanedaがある。誰かを見送るのには良い場所だ。

外は青天。雲が幻のようにかかっている。

翔は最近気に行っているゴルチェのカットソーにライダース。浅葱はポールスミスの薄手のコート、凛湖は抑えた色のGUCCIワンピースに黒のライダース。髪はプラチナブロンドに変えていた。
色素が薄い凛湖は髪のせいもあるが何処かスレインの様に見えた。翔と浅葱の荷物が凄い。

羽田には早く着き、Zepp Hanedaをちょっと観ておこうと思いZepp Hanedaの外観を見つめる。知らないヴァンドが夕方からコンサートがあるらしい。
この時Zepp Hanedaを何気なく観に行った事が後に運命の車輪を回す早すぎる前触れになるのだが。

「Zepp Hanedaかーー見ろよ、飛行機が飛んでいる。いつかHeartsでもやりたいな」

「そうね」

「人々が旅立つ場所。飛行機はどこまでも行く。何かロマンチックだな」

​購入はタイトルのリンクから。

bottom of page