Rougeは過去のリヴァイヴァルではない音楽という美しさの物語。そして翼を欲しがった少女と少女の羽根になりたがった少年の物語。そこにロックの美しさーーエレガンスとソロウがある。今もの生きているのなら捧げよう。何もかも。音楽と言う名の牧神に。叶うなら。何もかも捧げる。それは2015年12月8日。ジョン・レノンの死んだ日に。日本武道館に奇跡的にライズの頂点を極めたヴァンドのそのシーンから始まる。
そして、ナスチャの世話を頼んでいる神谷や透に連絡を取ってからICELAND AIRWAVES2022の配信を見始めた。
アーティストもオーディエンスも皆、幸せそうにICELAND AIRWAVES2022を楽しんでいる。
目で追って行くうちに翔の出番が来た。
翔はあくまで毅然としてWalpurgis odeの世界観を作り上げる。
そこには凛湖が知ってる翔の姿があった。
Last Dance In The Moonligtの歌詞が再び凛湖の心に浮かぶ。そして翔のWalpurgis odeのパフォーマンスに何が色や形のない暖かい感情のようなものを感じた。
そうして凛湖の検査入院は過ぎて行った。
途中透や神谷と連絡を取る。
透とはこんな話をした。
フェアリーテイルーー
「そうなんだ、透?」
「なんだ?」
「俺達いつまでこの5人で音楽を続けられるのかな?」
その言葉に透はいつもの瀟洒な感じでなく牙を剥くように声を響かせた。
「お前がそんな事言うなよ。凛湖ちゃんならまだしも彼女を支えるお前がな。凛湖ちゃんの心臓だってまだ長く持つかもしれねぇ。今の時点で抗癌剤の症状が出ていないのが奇跡なんだ。2度目の奇跡を待つしかねえべ。そんな事決して言うなよ」
そして、言葉が続いた。
「この曲がお前なりの凛湖との別れの曲だとしてもよ」
透は確信していた。そして翔は脳裏には受け入れているけれど感情はまだだった。
脳裏には詩人が宿る。感情には人間が宿る。
「分かっているけど怖いんだ。俺から凛湖がいなくなるのが。俺と凛湖は花と蝶。どっちかがいなくなっても生きて行けない」
その言葉を聞いて透は仕様がないなと言うように息を吹いて言葉を続ける。
「分かるけどさ。クラッシュのジョー・ストラマーが言っているんだけどさ。やるしかないのに、そんな簡単なことのわからない人間が多すぎるって。凛湖ちゃんは答えを決めた。嵐の前に立つように。それを傍らにいて支えなきゃならないお前がそんな気持ちでどうするんだよ。もっと自分の凛湖ちゃんの決断を信じてやるべきじゃないかよ」
「汐野さんさっきのmatryoshkaの事なんだけど」
汐野は歩きながら凛湖の美貌をじっと見た。テンダーでありながら甘い美貌。
その裏側に余命宣告されたと言う事実を宿している美貌を。
like an abandondoned old film
見捨てられた古い映画のよう
「うん、僕の方からもSenさんと連絡取ってみるよ。matryoshkaを世界で最初に紹介したのも僕だし、展示にも協力して貰ったんだ」
そう言う優しげな汐野の貌。それは透明で祈りが通じるかと思った。
I'm alreready getting tird of this toy
このおもちゃにはもう飽きたよ
「汐野さん私・・」
と凛湖は言いかけるのを止めて。ただ汐野と一緒に歩いていた。
I'll destroy it
壊してしまおう
その微かな蜉蝣のような凛湖のフィールの変化を感じ取り。
「凛湖ちゃんどうしたの」
I came back home now
今僕は家に帰って来たんだ
と聞いた。
How beautiful!
なんて美しい
How beatiful the world is!
なんて美しい世界なんだ!
その行方に君は立ち尽くしていた
Artistic Suicideの俺の愛が君をそこに止めたんだ
君は灰が落ちるシガレットにも気も止めず乱れた口紅をそのままに俺を見つめる
君の心をばらばらにしたのは誰だい
時間かい やはり俺なのかい
こんなにも愛しているのに
こんなにも愛しているのに
こんなにも愛しているのに
俺は時にくちづける事ができた
悲愴なShowな歌声にオーディエンスはsorrowの絶叫を上げる。
その悲痛な瞬間を残しShow、Rouge、Toll、Shinya、Akiraはステージを降りて行く。
アンコールのレスポンスをかけるのを忘れるオーディエンス。暫しのケイオスな時間。オーディエンスが落ち着きを取り戻しアンコールのレスポンスをし始めた時間に再び客電が落ちる。
このライヴはSoleilで配信されている為カメラが入っている。
入場時の様子もドキュメンタリー風に撮られていた。
マイクを向けられた少女達──オーディエンスが答える。
「Rougeちゃんが最高。このライヴで好きになったの。あの甘いテンダーな感触が好き。途中の衣装の変わる所とか!ガーデンシアターで観た時もとても素敵だったから最終公演でどれだけ素敵になっているんだろう」
「私はAkira君が好き。年下だけど凄くクールなドラム叩いて。あのドラム耳から離れない」
場面は変わり他のオーディエンスを映す。今度は少年達だった。
「俺はTollさんが好き。あのベース滅茶苦茶ヤヴァイ。ベースシックスも凄い。三代さんに近づいて欲しいな」
「俺はShinyaさんが好き。あのマニュピレイトはShinyaさんしか出来ないよ」
カメラは移り最後のドキュメンタリー画面を撮影する。少女だった。
「私はShowさん、最初はミック・ジャガーみたいな感じだったけどHeartsから自分のオリジナルを見つけてそれを表現して、あの歌声がたまらない。死んでも良いと思ってしまう」
不意に翔は凛湖にキスをした。
「翔・・」
凛湖のいらえに翔は答えた。
「死なないでくれよ」
凛湖は答えた。
「奇跡を待ちましょう」
それからジム・ジャームッシュのストレンジャーザンパラダイスとヴィム・ヴェンダースのパリ・テキサスを観ながら夕食を取り、翔はシャワーを浴びる。
浴びていると凛湖がなまめく肢体と共に入って来た。
「凛湖──」
「たまには一緒にシャワー浴びてもいいかなって。ねぇ」
そのまま、シャワーを一緒に浴びベットで凛湖を抱き──翔の腕枕の中に凛湖がいた。
「久しぶりね、翔の肌に触るの」
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